B-Life


連載 村山 順子さん 『心を届ける手紙(2)』

コロナ禍の今だからこそ、コミュニケーションの方法を見直してみませんか。(写真はイメージです)
コロナ禍の今だからこそ、コミュニケーションの方法を見直してみませんか。(写真はイメージです)

子どもさんから、親御さんに書く手紙」


 寝たきりの母へ“声のたより“を届けました!

 

 皆さまこんにちは!寒い日が続いていますが、お健やかにお過ごしでしょうか。今月は「子どもさんから、親御さんへの手紙」というテーマで、私自身の事を書かせて頂きます。

 

 私には、92歳の母がいます。もともとは鹿児島県の沖永良部島に住んでいましたが、世話をしてくれていた妹が病気になり、4年前に、弟のいる宮崎のケアハウスに入所することになりました。その後、妹は亡くなり母は故郷に帰ることができなくなりました。脳梗塞で寝たきりの母は、2年前から目が見えなくなり、テレビも見る事ができません。ただお陰様で、耳は聞こえます。

 

 コロナ禍で面会ができなくなり、2年前から会えていません。弟は母の主治医で、毎週施設に母を診察に行きますので、母への手紙を、弟に託し読んで貰っていました。

 

 そんな中、昨年の母の誕生日前に、弟から「姉ちゃん、お母さんへの手紙をCDにして送ってくれない?繰り返し聞くことができるからね」との提案がありました。“いいアイデア!”とすぐに書き始めました。いつもは手紙をすぐに書き上げる私ですが、今回は書いては読み直し、書き、削りました。寝たきりの母が何度も繰り返し聴くことになります。聴いた後の母がどんな気持ちになるのか、想像しながら書きました。たくさんあるエピソードの中から母にとって嬉しいこと、よく頑張った母が、自分を褒めたくなるような事ばかりを書きました。母の人生は辛い事も多かったけれど、実り多き人生だったと改めて感じてもらえるように。そして子どもたちからの感謝の思いを、長女の私が代表して書き、吹き込み、何度もやり直しました。

 

 ゆっくり、ゆっくり・・と意識して母に話しかけるように。長男に吹き込んだ音声を、CDにして貰った時、長男は「途中まで聴いていたけど、泣きそうで最後まで聴けなかった。良いんじゃない?おばあちゃん喜んでくれると良いね」と。母の気持ちに寄り添いながら、ベッドで聴いていて楽しく、嬉しく、懐かしく思えるような事ばかりを書いて吹き込みました。弟から母がCDを聴いている様子の映像が送ってきました。大きく頷き、笑い、泣きそうな表情になり、少し動く左足をバタバタと動かして、嬉しさを表してくれていました。

 

 特に表情が大きく変わったのは幼い頃、母が4姉妹にお揃いのボーダー柄のワンピースを作ってくれ、嬉しくて近くの商店街を行ったり来たりして見せびらかして歩いた時のこと。母は大きく頷き顔をくしゃくしゃにして笑い泣いていました。何とか母に、「私たち5人の子どもからの感謝の気持ちを伝えたい!」と始めた、手紙をCDに吹き込む試みは大成功でした。

お孫さんの顔を思い浮かべながら、話しかけるように書いてみましょう。
お孫さんの顔を思い浮かべながら、話しかけるように書いてみましょう。

 会えない、目が見えない、寝たきり・・厳しい状況の中でも、「親に感謝の気持ちを届けたい!喜んで貰いたい!」と思う時、その方法は色々ある事を体験しました。亡くなられた親御さんへの手紙を書いて、仏前に備えている方もいらっしゃいます。

 

 冬の夜は長いです。心静かに思い出しながら、親御さんへの感謝の手紙を書いてみませんか!

 


著者プロフィール


村山 順子 さん 鹿児島県沖永良部島出身

有限会社プロシード 代表取締役 会長

一般社団法人神戸暮らしの学校  代表理事

 

13歳のときに単身で沖永良部島から神戸に出てきて就学。短大卒業後小学校の教諭となる。青春時代を子供たちとの学校生活で過ごし、結婚のため退職、専業主婦となる。

 

夫の急逝をきっかけに52歳で家事代行サービス会社を起業。起業を決意するきっかけが、夫からの手紙だったことから、多くの人に手紙で大切な人に素直な気持ちを伝えて欲しいと「心を届ける手紙のセミナー」を2004年よりはじめる。

 

手紙のセミナーは、2019年には全国47都道府県で開催され、2021年現在10,000人以上の方が参加されています。 

 

著書:「人生を変えた10行の手紙」(ぱるす出版)

   「60歳の約束 見えますか、聴こえますか、これでいいですか」(創英社/三省堂書店)